今の若者は学ぶことを放棄し、そして働くことも拒否している。
と言われたらあなたはどう思いますか?
現在の若者の学びに対する姿勢に対して警鐘を鳴らしているのがこちらの本です。著者は内田樹さん。
学びとは何か、なぜ今の若者は学ばなくなったのかと言った部分を時代背景や考え方の変化とともに解説をしていてとても勉強になりました。
自分自身も学ばない大人になっていたのですが、この本をよんで勉強することを再度真剣に考えるようになりました。
今の若者が学ばなくなったのは消費主体になったから
まずこの本では若者が学びに対して消極的になったのは、消費主体になったことが問題と書いております。
消費主体とは、お金を使って何かを得ること。昔は消費ではなく、労働主体が最初だったそうです。
この部分を簡単に説明すると昔は子供は家の仕事を手伝うことに対して労働の対価としてお金や、承認を得ていました。
だが、便利になった現代においては子供たちはタブレットなどで遊び、静かにすることがもとめられます。そして買い物などにいくとしてお金を払えば何かをもらえる。という行動に最初から慣れています。
このお金のやり取りの対価としてサービスを受け取ることを本書では消費主体と言っています。
つまり、お金を払えば、その金額と同じだけのリターンを得るのが当たり前というある意味の資本主義的な考え方がゆえに、全てを損得勘定でみてしまうという現象が起きているそうです。
損得勘定で学校の教育を見ると、
「今から学ぶことが将来何の役に立つのか」という損得勘定が生じてしまい、結果として価値を感じない子供たちは勉強をしなくなる。という図式が成り立つそうです。
学びの本質とは
消費主体自体が悪いことではないですが、全てを損得で考えると我々は長期的な思考ができず、短期的なリターンを求めてしまうそうです。
そこで問題になるのが、何かを学ぶということは時間がかかるもの。ということ。
本書では
学びとは学ぶ前には知られていなかった度量衡によって、学びの意味や意義が事後的に考量される。そのようなダイナミックなプロセスのこと
と書かれています。
赤ちゃんの原語(母語)学習の時を考えるとわかりやすいのですが、赤ちゃんが言語を学ぶときは「これを学ぶとどんな得をするのだろう」と言ったことは考えていません。とにかく親や周りの人たちが話している言葉をずっと聞き続け、ある時から音を真似することで少しずつ言語を理解していきます。
最初から何を学ぶかがわかっているのではなく、毎日のように少しずつ影響を受けているものがある日、意味をもつのが学びの本質なのです。
だからこそ学校の勉強も損得ではなく、まず全体をわからないなりに何度も聞き、そのなかで知識が身に付くというのが学びのあるべき姿なのです。
それを短期的に考えてしまう消費主体の考え方は、結果的に彼らの知識や学びの機会を奪ってしまうことにつながると著者は考えています。
他にも
愛用の30センチのものさしで世界の全てを図ろうとしている
という表現もされていました。今の自分では推し量れないものを学んでいるので、損得はその状況ではわからないものなのです。
ニートとフリーターの違い
NEETとフリーターの違いも本書には書かれていたので簡単にまとめておくと
ニート:働かないことを自分で決定した人
フリーター:状況として無職であり、仕事を探していたり、やりたくないわけではない
この二つは似ているようですが意味合いが大きく違います。
また日本のニートは特に特殊らしく今の環境においてはさらに数が増えていくと予想されています。
印象的だったのがニートはあくまで現実的で、徹底的に合理的な判断として無職を選んでいるということ。
彼らは働くことによる不安やプレッシャーというダメージよりも、家で親や周りの人から小言を言われるダメージの方がましだと合理的に判断し、働かず家にこもるという決断をしているというのです。
こういった視点は初めてでした。
ニートから共感されるIT社長(ホリエモン)
なぜお金を稼がないニートがIT社長に共感をするのでしょうか?
これは実際の例なのですが、IT社長であったホリエモンが過去にニートたちから圧倒的な支持を受けていたそうです。お金持ちで仕事をばりばりとしていてお金持ち(に見える)ホリエモンはなぜそこまでの支持を受けたのでしょうか。
これは答えは簡単です。IT事業は合理的かつ、効率的なビジネスだからです。
先ほども書いたように、ニートは合理的決断として働かないという選択をしています。やすい賃金のためにかかるストレスよりも、家にいて小言を言われるストレスの方が少ないから引きこもりになるのです。
ただ、IT事業は労働に対してのリターンが大きいため合理的に考えてもストレスに対してのリターンが釣り合うか、それ以上なのです。
だから投資として考えると元がとれる確率が高いからこそ支持を受けたそうです。もっとも少ない労働で、もっとも大きいリターンを出すこと。これがホリエモンが人気だった理由です。
ノイズをシグナルに変えよう
ソクラテスが提唱した「問題のパラドクス」にもあるように、問題というのは解決策がわからないものではなく、解決方法がわかりそうだけど、まだ解けていないものを指します。
全くわからないものは問題として認識すらできないですから。
だから学びの中で大切なことは学びのプロセスを理解すること。それを一度経験することができれば、そこからどんなことを学ぶにしても応用が効きます。
本の中ではノイズをシグナルに変えることが学びという表現をしていたのですが本当にその通りだなと感じました
まとめ:学びとは見えない闇の中をあるくようなもの
タイトルからはなぜ若者が学ばないのか。という話かと思いきや話は学びの本質や、教養を身につけることの大切さを年齢を問わず説明してくれた本だと思いました。
自分自身も消費主体の考え方をもっており、それで全ての事象を損得で考えがちだったのですが、今後はもうすこしノイズをシグナルに変える努力をしてみようと思いました。
ビジネスは答えがわかっていて、反応が早い。そうゆう意味ではシンプルです。ビジネスのことを学んでいるのでこちらでもしっかりと結果を出しつつ、より色々な教養を身につけていきたいと思いました。とても素敵な本に会えました。
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